ユーグレナによる
バイオ燃料生産
近年問題となっている人口増加、異常気象や環境破壊などに起因して、地球規模での食糧・エネルギー不足が懸念されています。地球上に存在する炭素を含む有機化合物(食糧、燃料)は、もとをたどれば植物が光合成によって大気中の二酸化炭素(CO2)を固定したものです。つまり、植物に活発に光合成をさせることが、食糧や燃料を増やす一つの手段となります。この様な視点で、世界中で多くの研究が行われています。
真核微細藻類ユーグレナ(ミドリムシ)は鞭毛運動をする動物的性質を有し、かつ葉緑体により光合成を行う植物的性質をも有する生物です。その生態は実に特異なもので、「細胞壁を持たない」「高い貯蔵物質(パラミロン、ワックスエステル)生産性能」「pH 3.0の高い酸性環境下、40 %の高濃度CO2でも生育が可能」「高栄養価、高アミノ酸、高ビタミン含有」など、他の生物とは異なるさまざまな特徴を持っています。近年では、ユーグレナの栄養成分を活かして、食品やサプリメント、家畜・稚魚・稚貝飼料として利用されています。一方、ユーグレナは光合成によって“パラミロン”という貯蔵多糖を蓄積しますが、ユーグレナを嫌気条件下(酸素がない状態)に置くとパラミロンを分解して“ワックスエステル”(脂肪酸と脂肪族アルコールがつながったもの)を生産します。このパラミロンからワックスエステルへの変換は、エネルギーであるATPの生産を伴うため、“ワックスエステル発酵”と呼ばれるユーグレナに特徴的な代謝経路です。このワックスエステルは、炭素数14からなる脂肪酸エステル:ミリスチルミリステート(C28)が主成分であり、一般的なバイオディーゼルだけでなく代替ジェット燃料としても利用も期待されています。
我々はこれまでにバイオテクノロジー(遺伝子組換え技術)を利用して、植物(タバコ、イネ、シロイヌナズナ、レタス、サツマイモなど)の光合成能力を強化し、早く育ち、たくさん実る作物(植物)を作出することに成功してきました。この技術を利用して、食糧/エネルギー問題の解決に不可欠な資源となり得るユーグレナの有用性をさらに高めるための研究を行っています。
高栄養価の作物の作出
植物での有用タンパク質生産
植物は核ゲノムだけでなく、葉緑体にもゲノムを有しており、葉緑体への遺伝子導入により多量の外来タンパク質を葉緑体内に蓄積させることが出来る。そこでこの技術を用いて、生育促成作物を作出すると共に、ビタミン生合成能力の強化、有用用タンパク質の生産を試みている。
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化合物による
環境ストレス耐性向上
動くことのできない植物は高塩・高温・低温・乾燥など様々な環境ストレスにさらされています。一方で、植物はこうした環境ストレスに適応し、生存するために優れた耐性メカニズムを備えています。本研究室ではこうした植物の耐性メカニズムを化合物を使って強化することで、植物の環境ストレス耐性を強化する技術の開発を目指しています。化合物処理は様々な植物種に利用可能であること、一つの化合物によって複数の環境ストレス耐性を強化できること、遺伝子組換えを伴わないといった利点があります。
これまでにエタノール、ミトコンドリア阻害剤が植物の高塩ストレス耐性を強化できることを発見してきました。これら化合物を事前に植物に処理することによって、活性酸素除去酵素の遺伝子発現および活性が増加し、植物の耐塩性を強化できることを明らかにしています。現在は、これらの化合物を肥料として実用化すること、また新たな耐塩性化合物の探索やそのストレス耐性の分子メカニズムの解明を行っています。